トイレのタンクから聞こえる「ブーン」という異音は、長年働き続けてくれた内部の部品たちが、そろそろ限界だと訴えている悲鳴かもしれません。トイレのタンクの中は、限られたスペースに複数の部品が連携して動く、非常に精密な機械のようなものです。これらの部品の多くは樹脂やゴムでできており、毎日水に浸かっているため、経年劣化は避けられません。異音の最も一般的な原因箇所である「ボールタップ」は、タンクに水を供給し、適切な水位で止めるという重要な役割を担っています。このボールタップの内部には、水の流れを制御するためのダイヤフラム弁やパッキンといった小さな部品が組み込まれています。これらのゴム部品が長年の使用で硬化したり、摩耗したりすると、水を完全に止めきれなくなります。その結果、弁が中途半端な状態で細かく振動し、「ブーン」という共振音を発生させるのです。これは、給水が完了する直前、つまり水が止まるか止まらないかの瀬戸際で鳴りやすいのが特徴です。また、ボールタップと連動して動く「浮き球」やそのアーム部分に不具合が生じても、正常な水位で給水が止まらず、異音の原因となることがあります。ボールタップ以外にも、「フロートバルブ」という部品が関係している可能性もあります。これはタンクの底にあるゴム製の栓で、レバーを引くと持ち上がって便器に水を流し、水がなくなると自重で閉じてタンクに水を溜める役割をします。このフロートバルブが劣化して完全に閉まらなくなると、タンク内に常に少量の水がちょろちょろと流れ込み続ける状態になります。すると、ボールタップは「まだ水が満タンになっていない」と勘違いし、延々と給水を続けようとします。この中途半端な給水状態が、うなり音を引き起こすことがあるのです。これらの部品の寿命は、一般的に7年から10年程度と言われています。もしご自宅のトイレをそれ以上使用しているのであれば、異音は部品交換の時期を知らせる明確なサインと捉えるべきです。
トイレの異音はタンク内部品劣化のサイン