お風呂の床下で発生した水漏れを、「いつか直せばいい」と軽く考えて放置することは、家全体を危険に晒す非常にリスクの高い行為です。水漏れが引き起こす二次被害の中でも、特に深刻で破壊的なのが「シロアリ」の発生です。シロアリは、暗くて湿った場所を好み、湿気を含んだ木材を主食としています。つまり、床下で水漏れが起きている状態は、シロアリたちにとって最高のレストランを開店し、「どうぞお入りください」と招待状を送っているようなものなのです。水漏れによって常に湿っている床下の土台や柱は、乾燥した硬い木材よりも柔らかく、シロアリにとって格好の餌食となります。彼らは土の中から侵入し、蟻道と呼ばれるトンネルを作りながら、家の基礎となる木材を内部から静かに、しかし確実に食い荒らしていきます。問題なのは、この被害が建物の強度に直接関わる部分で進行するということです。家の重みを支える土台や柱がシロアリによってスカスカにされてしまうと、建物の耐震性は著しく低下します。普段の生活では気づかなくても、大きな地震が発生した際に、本来耐えられるはずの揺れで家が倒壊してしまうという最悪の事態を招きかねません。また、シロアリ被害は床下だけに留まりません。彼らは壁の内部を伝って移動し、柱や梁、さらには家具まで食害を広げていくことがあります。気づいた時には、家のあちこちがボロボロになっていたというケースも珍しくないのです。一度シロアリが住み着いてしまうと、その駆除には専門的な技術と薬剤が必要となり、高額な費用がかかります。さらに、食い荒らされた木材の修復や交換には、リフォーム並みの大規模な工事が必要になることもあります。お風呂の床下水漏れは、単に水が漏れているという現象ではありません。それは、家の寿命を縮め、家族の安全を脅かすシロアリという恐ろしい害虫を呼び寄せる引き金になるということを、決して忘れてはならないのです。
床下水漏れの放置がシロアリを呼び寄せる