トイレの水を流した後に聞こえるゴボゴボという音と、便器内の水位が異常に低くなる現象。この二つが同時に起こるのには、排水の仕組みに隠された明確な理由があります。この謎を解く鍵は、トイレの構造、特に「排水トラップ」と「空気」の関係にあります。トイレの便器の内部は、ただの筒ではなく、S字やU字のように曲がりくねった構造になっています。これが排水トラップと呼ばれる部分で、常に一定量の水が溜まるように設計されています。この溜まった水は「封水」といい、下水管から上がってくる臭いや害虫が室内に侵入するのを防ぐ、いわば蓋の役割を果たしています。普段、私たちがトイレのレバーを引くと、タンクから勢いよく流れてきた水が便器内の汚物を押し出し、この排水トラップを通過して下水管へと流れていきます。この時、水の流れは非常にスムーズです。しかし、排水トラップの先にある排水管のどこかで詰まりが発生すると、水の流れが堰き止められてしまいます。それでもタンクからの水は流れ込もうとするため、詰まっている箇所の前で水圧が高まります。この圧力によって、排水管内に溜まっていた空気が行き場を失い、唯一の出口である便器側へと逆流してくるのです。この空気が封水を通過する際に「ゴボゴボ」という音を発生させます。これが異音の正体です。そして同時に、詰まりによって排水管内の流れが滞ると、一種のサイフォン現象のようなものが起こり、便器内の封水が排水管の奥へと過剰に引っ張られてしまいます。その結果、本来溜まっているべき水の量が減り、水位が通常よりも低くなってしまうのです。つまり、ゴボゴボ音と水位の低下は、排水管の奥で水と空気が正常に流れていないという、内部からのSOSサインなのです。このメカニズムを理解することで、なぜこの現象が危険なのか、そして早急な対処が必要なのかがより深くわかるはずです。