分譲マンションを所有する人々にとって、建物の維持管理は避けては通れない義務ですが、とりわけ専有部分の配管管理は盲点になりがちです。管理組合が担当する共用部分の縦管は計画的に更新されることが多い一方で、各住戸の床下を通る専有部の枝管については、所有者個人の裁量に委ねられています。この枝管の経年劣化こそが、深刻な水漏れ事故を引き起こす最大の要因となっています。築二十年から三十年を超えるマンションでは、金属製の配管が内部から腐食し、ある日突然、微細な穴が開いて階下に漏水することが珍しくありません。このような事態に際して、多くの住民が抱く期待が火災保険による救済です。しかし、技術的な視点から見れば、金属の酸化による減肉や腐食は物理的な必然であり、損害保険が定義する突発的な外来の事故には該当しません。この判定基準は厳格であり、多くの保険金請求が経年劣化を理由に却下されているのが実情です。もし保険が適用されたとしても、それは被害を受けた側の内装復旧費用に限定されることが多く、原因となった自分自身の配管を修理する費用は、そもそも保険の対象になりません。これは保険が損害を填補するためのものであり、メンテナンス費用を肩代わりするものではないからです。マンション管理の専門ブログとして警鐘を鳴らしたいのは、保険があるから大丈夫という過信が、結果として修繕の遅れを招き、さらなる甚大な被害を引き起こすという悪循環です。一度水漏れが発生すれば、階下の住人との信頼関係は一瞬で崩れ、修繕が終わるまでの数ヶ月間、精神的な苦痛を強いられることになります。また、経年劣化による漏水を繰り返すような物件は、保険会社からリスクが高いと見なされ、次回の更新時に保険料が大幅に値上げされたり、最悪の場合は契約更新を拒絶されたりすることさえあります。こうなると、マンション全体の資産価値にも悪影響を及ぼしかねません。経年劣化と保険の限界を正しく認識することは、健全なマンション経営の第一歩です。配管の耐用年数を意識し、リフォームの機会に合わせて配管を樹脂製のものに交換するなど、予防的な措置を講じることが、結果として最も安上がりで安心な選択肢となります。保険はあくまで万が一のバックアップであり、建物の寿命を司る配管の管理を保険に頼り切ることは、極めて危険なギャンブルであると言わざるを得ません。
マンションの配管更新を怠るリスクと経年劣化に伴う水漏れ保険の限界