我が家は築十五年ほどの一戸建てで、これまで大きなトラブルもなく快適に暮らしていました。その異変に最初に気づいたのは、お風呂上がりに脱衣所の床を歩いた時でした。いつもなら硬いはずのクッションフロアが、特定の部分だけ、なんだか少し柔らかく、沈むような感触がしたのです。最初は「気のせいかな」「湿気で床材が浮いているだけだろう」と軽く考えていました。しかし、そのブヨブヨとした感触は日を追うごとに顕著になり、範囲も広がっていくように感じられました。そして決定打となったのが、鼻につくカビ臭さです。換気をしても、消臭剤を置いても、脱衣所から浴室にかけてのエリアに、じめっとした土のような、不快な臭いが常に漂うようになったのです。これはただ事ではないと直感し、インターネットで症状を検索すると、「床下水漏れ」という恐ろしい言葉が目に飛び込んできました。すぐに地元の水道修理業者に連絡し、点検を依頼しました。業者の方は、まず脱衣所にある床下収納庫から床下の様子を確認してくれました。懐中電灯の光が照らし出した光景に、私は言葉を失いました。本来なら乾いているはずの床下の地面が広範囲にわたって黒く湿っており、場所によっては水たまりまでできていたのです。浴室の真下にあたる基礎コンクリートは、まるで汗をかいたようにびっしょりと濡れていました。原因は、ユニットバスの床下を通る給湯管にできた小さな亀裂でした。そこから何ヶ月、あるいは何年もかけて、じわじわと温かいお湯が漏れ続けていたのです。床がブヨブヨしていたのは、床板が湿気を吸って腐り始めていたからでした。修理は、床の一部を剥がして配管を交換するという大掛かりなものになり、乾燥期間も含めて一週間以上お風呂が使えない不便な生活を強いられました。あの時、床の違和感を気のせいだと放置し続けていたら、シロアリ被害や家の土台への深刻なダメージにつながっていたかもしれないと思うと、今でもぞっとします。
ある日突然床がブヨブヨし始めた恐怖体験