私は長年、マンション専門の保険代理店として、数多くの漏水事故の立ち会いに携わってきました。その中で、お客様に最も理解していただくのが難しいのが、やはり経年劣化による免責の規定です。よくいただく質問に、保険料を払っているのに、なぜ古くなった配管の修理代が出ないのかというものがあります。私の答えはいつも同じです。保険は壊れることを防ぐためのものではなく、壊れたことによる経済的な打撃を和らげるためのものです。特にマンションの場合、築三十年を超えると事故の八割以上が配管の老朽化に起因します。保険会社の審査は年々厳しくなっており、以前は事故として通っていたようなケースでも、最近は現場写真や配管のサンプルの提出を求められ、科学的な根拠に基づいて劣化と判定されることが増えています。しかし、ここで知っておいていただきたいのは、原因が経年劣化であっても、それによって発生した他人への被害、つまり対人・対物の賠償については、個人賠償責任保険でカバーできる可能性があるということです。もちろん、全ての保険会社がこれを認めるわけではありませんが、所有者が善管注意義務を果たしていたと認められれば、被害者の救済を優先する判断が下されることもあります。代理店としてアドバイスしているのは、管理組合単位で特約を厚くすることです。例えば、水漏れの原因が専有部か共用部か分からない場合の調査費用を補填する特約や、原因を問わず被害者の部屋を元通りにするための費用を支払う特約などは、築古マンションにおいては非常に有効です。また、住民個人に対しては、リフォームをした際の工事証明書を保管しておくことを推奨しています。新しい配管が破損したのであれば、それは明らかに事故であると主張できるからです。保険は加入して終わりではありません。建物の老化という抗えない事実に対して、保険をどう使いこなし、どこまでを自己負担で賄うべきかの線引きを明確にしておくことが、トラブルを防ぐ近道です。私たちは、単に契約を結ぶだけでなく、お客様が経年劣化のリスクを正しく理解し、現実的な維持管理計画を立てられるよう、情報の提供を続けています。